2018/03/01

佐賀県北西部、玄界灘に面した唐津市は、海と山に囲まれた風光明媚なまち。
その中心にそびえる「唐津城」は、まるで海に浮かぶような優美な姿で、訪れる人々を静かに迎えてくれます。
白亜の天守が青空に映えるその姿は、「舞鶴城」とも呼ばれ、鶴が舞うような美しさを讃えられてきました。
唐津城の築城は、江戸時代初期の慶長7年(1602年)。
豊臣秀吉の家臣・寺沢広高が、名護屋城の石材を転用して築いたとされ、海に面した「海城」としての構造が特徴です。
敵の侵入を防ぐための工夫が随所に施され、当時の築城技術の粋が詰まっています。
現在の天守は昭和41年に再建されたもので、内部は郷土資料館として公開されており、唐津焼や藩政時代の資料、城下町の歴史を伝える展示が並びます。
最上階の展望台からは、唐津湾や虹の松原、遠くに玄界灘まで見渡せる絶景が広がり、四季折々の風景が心を癒してくれます。
春には桜が咲き誇り、秋には紅葉が彩りを添え、冬には澄んだ空気の中で凛とした姿を見せる唐津城。
季節ごとに異なる表情を見せるこの城は、地元の人々にとっても、旅人にとっても、心の拠り所となる存在です。
そして、唐津城を中心に広がる唐津市そのものも、歴史と文化が息づく魅力的なまちです。
城下町として栄えた唐津は、今も昔ながらの町並みが残り、歩くだけで時の流れを感じることができます。
特に「唐津焼」は全国的にも知られる伝統工芸で、素朴ながらも品格ある器の数々は、使う人の心を和ませてくれます。
市内には窯元やギャラリーが点在し、職人の手仕事に触れることもできます。
唐津城を訪れたら、ぜひ足を延ばしてほしいのが「鏡山」です。
標高284メートルのこの山は、唐津市街地の北東に位置し、山頂の展望台からは唐津湾、虹の松原、そして唐津城を一望できます。
晴れた日には、海と空の境界が溶け合い、松原の緑が帯のように湾を縁取ります。
その中心に、まるで絵画の一点のように佇む唐津城。
遠くには壱岐や対馬まで望めることもあり、まさに“風景が語る歴史”を感じる瞬間です。
地元の人々にとって鏡山は、遠足や初日の出、恋人との思い出の場所としても親しまれています。
鏡山からの眺望は、唐津というまちの広がりと、そこに生きる人々の営みを静かに見守ってきた証。
唐津城を“内側から”感じたあとに、鏡山から“外側から”見つめることで、まち全体がひとつの物語として立ち上がってくるのです。
海の幸にも恵まれた唐津では、新鮮な魚介類を使った料理も楽しみのひとつ。
呼子のイカは特に有名で、透き通るような身と甘みのある味わいは、一度食べたら忘れられない逸品です。
港町ならではの食文化も、唐津の魅力を語るうえで欠かせません。
唐津城を訪れることは、単なる観光ではなく、唐津というまちの歴史と人々の営みに触れる旅でもあります。
静かに海を見下ろす天守の姿に、時を超えて受け継がれてきた誇りと美しさを感じながら、城下町を歩き、祭りに心を躍らせ、器に触れ、味覚を楽しむ――そんな唐津の旅は、きっと皆さんの記憶に深く刻まれることでしょう。